★Novel >> フルーツ/葉月 ルナ

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「今日のおやつは林檎だよ」
「「わーいvv」」






 ご主人様の言葉にシルヴィもクマタンも嬉しそうにジャンプしました。
 今日は林檎を使っておやつを作る事になったご主人様はエプロンをつけて台所へと向かいました。
「………」
「?」
 そんなご主人様の後を追いかけるユエ君。
 シルヴィは耳をパタパタ動かしつつ首を傾げます。
「ちゅーvv」
 よく見てみると、ユエ君もエプロンをつけています。
 しかも、エプロンのポケットの中にはちぃーちゃんが入っています。
「どうしたんだ?お前」
 クマタンを肩に乗せたお兄さんが問い掛けました。
「今度ちぃーちゃんにチーズのケーキを作ろうと思ってな」




「ちゅv」









 台所には林檎やバター、レモン汁等が並んでいます。
 今日のおやつは林檎のタルトです。
「それじゃあ作ろうね」
 ニッコリ微笑むご主人様にユエ君は「おう!」と力強く答えました。
 かなりの力が入っています。
 そしてそれにつられてちぃーちゃんも気合を入れます。
「ちゅ!」
 そんな二人にご主人様は楽しげにくすくす笑っていました。
 ただタルトを作るだけなのに、戦いを始めそうな勢いがあるからです。






 いえ、ある意味ではこれから戦いが始まるのです。









「むー!」
 シルヴィは目の前のカードを睨みつけています。
 隣ではクマタンが応援の旗を振り回していました。手作りなのでしょう。
『がんばれ!』と書いてあるのですが、んの字が反対になっています。
 きっとシルヴィが作ったのでしょう。(シルヴィはよく文字が反対になってしまうのです)



「これとこれ!!!!!」



 ぺちぺちっ!!


 床の上のカードを二枚叩きます。
「開けてご覧?」
「むむ!!」
 お兄さんの言葉に唸りながらカードを捲ります……が。








「うわわ〜ん!負けちゃったよー!」
「次は僕の番!!負けないぞー!」
 持っていた旗を振り回しつつ、クマタンも参戦です。
 お兄さんは自分が手に入れたカードとシルヴィの手に入れていたカードを手にしてシャッフルします。
「ふふ……負ける気は無いさ」
 そう言って辺りにカードを巻き散らせました。
「頑張れー!!頑張れー!!」
 先程クマタンが振り回していた旗を受け取り、今度はシルヴィが振り回します。
 しかし重いらしく……少しばかり旗に振り回されている感があります。









「む〜?こっちとこっち、ドッチかな〜??」
「こっちこっち!!」
「こらこら、二対一になってるぞ?」
 途中から重くて旗を振れなくなったシルヴィも参戦し、お兄さん一人で戦う事になっていました。
「わー!!!間違えちゃったー!!!!!」



 けれど、お兄さんは強かったのでした。







「出来たよ〜」
「あ!ご主人様ー!!」
 耳をピンと立て、シルヴィは立ち上がります。
 ご主人様の手の中には美味しそうなタルトの匂いが……



 くんくんvv



「うわぁ〜vv」
 シルヴィは幸せそうに耳を震わせます。
 一緒に尻尾も震えています。
「し……シルヴィ、落ち着いて〜」
「だって〜vv」
 ご主人様の料理が大好きなシルヴィ。
 どんなに毎日食べても愛は変わらず、食べる時は身体全体で幸せを伝えています。
「くすくす、手は洗った?」
 そんなシルヴィが見たくて毎日料理をしているご主人様なのです。
「「うん!!!!!」」
 フォークをジタバタと持ってくる二匹。




「?黎明、ユエは?」



 そう、台所から出てきたのはご主人様だけでした。
 ユエ君の姿がありません。
「ユエはまだ台所だよ」
 タルトをナイフで切りながらご主人様は答えました。
「ふーん?」
 何故やってこないのか、不思議に思ったお兄さんは何気なく台所へ。





「あ!!駄目!!!!!」



 慌ててご主人様が止めますが……手遅れでした。








「うっ!!!!!!?」
 お兄さんはその場に口元を押さえて膝をつきました。
「お……遅かった……」
「「???」」



「ちゅーvv」
「美味しいかい?ちぃーちゃん」
 台所には部屋に匂いが伝わらない様に結界が張られていました。
 何故かと言うと……





 台所ではちぃーちゃんの為に作ったチーズケーキの匂いが充満していました。







 お兄さんはチーズや牛乳が嫌いなのです。
 その匂いを嗅いだだけで大変な事になってしまうのです。

「ん?どうした?」
 その場に蹲っているお兄さんを見つけたユエ君が近づこうとしますが……


「寄るな!触るな!近寄るな!!!」

 錯乱しているのか、同じ事を言っています。
「あ?何だよ」
「ちゅー?」
 ちぃーちゃんは首を傾げつつも美味しそうにチーズを食べていました。







 それから数日間の間、お兄さんもキリチョもお家には来てくれませんでした。

「つまんないの〜」
「ねー」


END


そして乳製品嫌いな彼(-_-;)
ごめんなさいキリチョ、私はクマタンたちと同じくかなり好きです〜


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