★Novel >> 10年後/葉月 ルナ
| そこの街はとても賑わっていました。 人々は忙しそうにしながらも笑顔で生活を続けています。 いつも変わらない生活。 平凡。 けれど、それが幸せ。 平和な時。 ぽてぽてぽて。 頭からフードを被ったヌイ族の子供が街の中を走っていました。 その手にはメモ帳が握られています。 「え〜っと……シルヴィのふりかけは買ったし〜……お兄さんからの『必殺必中呪いの人形』も買ったし〜」 メモ帳に書かれている品で既に買った物を鉛筆で消しつつ「よしっ!」と声を上げ。 「後は!栗饅頭を買っておつかい終了!!!」 ニッコリと笑顔を作りました。 被っていたフードを外し、クマタンは嬉しそうに宿へと戻っていきました。 その大きな耳には……赤いイヤリングが下がっていました。 宿に戻ってきたクマタンはいきなり女将さんに頭を撫でられました。 「??」 「アンタ、一人で買い物かい?良い子だねv」 クマタンは女将さんに褒められて嬉しそうに頬を赤らめます。 口では「僕子供じゃないよ〜」と言っていますが、嫌がってはいません。 きっとシルヴィだったら耳と尻尾を震わせて喜んでいるでしょう。 女将さんはクマタンの頭から手を離すと、先程焼いたばかりのクッキーを手渡してくれました。 「あ、ありがとーv」 貰ったクッキーを両手で受けとり、クマタンは頭を下げます。 礼儀正しいのです。 一口食べ、クマタンは笑顔で「とっても美味しいv」と言いました。が…… 本当はシルヴィのご主人様のクッキーの方が…… クマタンがモグモグとクッキーを食べていると、別のお客さんがクマタンの大きな耳に下がっているイヤリングに気がつきました。 「お!?お前魔法使いか!?」 「むぐっ?」 いきなり声をかけられ、クマタンは驚きの声を上げてしまいます。 喉に引っ掛かる事はありませんでしたが、一瞬ピンチでした。 「え?魔法使い?」 女将さんはクマタンの耳に下がっているイヤリングをお洒落だと思っていた為、疑問の声を上げました。 「あぁ!俺も実際に見るのは初めて!ヌイ族でイヤリングをしてるのは魔法使いだけなんだ!」 「えー!?マジで!?」 「きゃ〜vv可愛いv」 そこの宿屋は結構お客さんが入って、その場に居た全員がクマタンへ視線を向けました。 突然の大注目にクマタンは顔を真っ赤にしてしまいます。 『広間に居ないでサッサとお部屋に入れば良かったよ〜』 そこへ杖を持ったお兄さんが近づき、クマタンの顔を覗き込みました。 少しお酒くさいです。 「なぁ俺と組まないか?」 「え?」 突然の誘い、クマタンはキョトンとしてしまいました。 「実は……少し前に符術師と別れちゃって……どうだ?」 「あー!お前ずるいぞ!?」 ヌイ族は基本的に良い子で可愛いです。 なので人間の皆さんはヌイ族が大好きなのです。 けれど友達になるには純粋な心が必要で……不純な人にはあまり懐いてくれないのです。 その分、純粋な人にはとても懐くのですが。 そんなヌイ族で魔法使い! これは一緒に居たい!! その場に居たお客さんは皆そう思いました。 「え?え?え?」 クマタンはオロオロして辺りを見回します。 辺りにはクマタンと仲良くなろうとする人でいっぱいです。 みんな口々に何かを言っていますが重なり合ってしまい、何を言っているのか理解出来ません。 揉みくちゃにされ、クマタンは涙声で叫びました。 「〜〜もー!!!!!やだー!」 クマタンが大声で叫び、辺りに煙が出現しました。 「なっ何だ!?」 辺りを包み込むピンクの煙。お客さん達は突然の煙に大慌て。 「あの子は!?」 「居ないぞ!?」 まだ煙でよく見えませんが、白くて可愛らしいヌイ族の子の姿はありません。 「何処だ!!」 「あっちに行ったよ!?」 「急げ!!!!」 ピンクの煙が収まる時には……その場には女将さんしか残っていませんでした。 あと……一人。 「けほっ」 「あれ?アンタは行かなくて良かったのかい?」 煙にむせている可愛らしい少年に声をかける女将さん。 けれど少年は「えへ」と笑っているだけです。 その耳には……赤いイヤリングが。 「?」 少しばかり違和感を感じながらも。女将さんは笑顔で。 「ココに泊まるのかい?」 「はい、今夜一晩」 少年はニッコリと微笑みました。 その口元には……クッキーのカスが……… その後しばらくの間……クマタン捜索隊という組織が街には居ました。 が。愛しき熊は見つかりませんでしたとさ。 |
END
| クマウィザードってキャラがいるんですよね、ルナちゃんのイラストで。 いつかクマタンはそれになるはずだと力説。 でも全然変わりなさそうです。 |