★Novel >> 違う、そこは笑い処じゃないんだ!/葉月 ルナ

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 この世には聖獣と呼ばれる存在がいる。
 そいつらは、自分の力を受け継ぐ一族に守護を与える。
 守護を与えるかわりに……一族から最も力の強い人間を出し、自らの器として一定期間を生活させなければならない。
 その器に選ばれる事、それは物凄い名誉らしい。



 一定期間は聖獣によって違うらしく。

 一年の奴も居るし、一日や一ヶ月の奴も居る。



 ある日、親父が言った。
『ユエ、今回の器はお前が選ばれたぞ』

 親父の次に長老が。
『しかし、今回の器はまだ幼すぎる……じゃから青龍様の為に修行をしに出てもらう』


 おい、勝手に決めるな。

 俺の言葉を完全無視し、次の日には強い魔法使いへと手紙を出されてしまっていた。


 白虎族出身で物凄く強い魔法使い、キリチョの元へと……

 手紙は魔法によって一時間で戻って来た。
 そこにはこう書かれていた。


『了承、即刻的迎行』(分かりました、すぐに迎えに行きます)

 こうして……俺は気がついたらキリチョという男の弟子になる事が決定してしまった。






 次の日、村には一人の男と……俺と同い年程度の子供がやって来た。
 親父と長老はキリチョという男と話を始め、子供はほっとかれていた。

「ねぇ」
 俺の袖を軽く引っ張る見た事の無い子供。
 長い髪をみつあみに縛り、ダボダボの民族衣装を着て耳には朱雀の羽のイヤリングをつけていた。
 それだけでこいつが朱雀族の器に選ばれた者というのが理解出来た。
 なんせ器にはそれなりの力を持った品が与えられ、四六時中つけていなければならない。
 その力を感じ取った聖獣がいつでも降りてこられるように……と。
 俺も昨日青龍の篭手を長老に貰っていたから。
「ねぇ」
 そいつは俺の袖を懸命に引っ張り続けている。どうやら俺の返事を待っているみたいだった。

「……何だ?」
「遊ぼ?」

 そう言ってそいつはニッコリ微笑んできた。
 結構可愛い顔をしていて、俺は少し頬を赤く染めてしまった。
 頬を押さえ、俺はそこから離れた。
 俺が走ったのを見て、そいつもついてきた。
 遊んでくれると思っているのかもしれない。

「黎明、そんなに遠い所には行くなよー」

 キリチョの言葉に黎明と呼ばれたあいつは「はーい」と返事を返した。




 家を出た俺は近くの森へと向かった。
 そこには俺しか知らない秘密の場所があるから。
「待ってー」
 その前に……後ろからついてくる黎明とかいう奴を撒かないとな。
「へん!追えるモンなら追ってみやがれ!!」
 そういい残し、俺は全速力で森の中へと入っていった。
「はう!?」
 この森は結構複雑で、村の奴らも俺以外あまり入ってこない場所だ。
 余所者のこいつが俺について来れる訳が無い。
「待ってよー」
 






「へへ、今ごろどっかで迷子だな」
 俺はお気に入りの一番高い木の枝に座り、笑っていた。
 もしもあいつの泣き声でも聞こえたら探しに行ってやろう。
 そんな事を思いながら、俺は気持ちの良い風に吹かれていた。
 風は俺の髪を撫で続けている。

「お〜い」


 風の声が聞こえた。

「お〜い」


 …………………風、だよな?


 俺は慌てて下へと視線を向けた、そこには置いてきた筈の黎明が手を振っていた。
 懸命に木の枝にしがみつきながら。
「なっ!?」
「見つけたーv」
 嬉しそうに笑う黎明を見、俺は木の枝から落ちそうになってしまった。
「何でお前がここに居るんだ!?」
 その言葉に黎明は軽く首を傾げながら答えた。
「え?風さんや森さんに聞いたの」
 黎明は今俺達が乗っている木の幹に手を当て。

「ね?」

 まるでその言葉に答えるかの様に、木は葉っぱ達を揺らせた。
「そしたら、ユエがココに居るって答えてくれたんだ」
「お前……俺の名前教えたっけ?」
 呆気に取られる俺の方に視線を戻し、黎明はまた笑顔を浮かべた。
「この森さんがね、ユエの事を沢山教えてくれたんだよ」

 名前も。

 好きな遊びも。


 この場所は親と喧嘩した時に見つけた秘密の場所だって事も。


 また可愛い笑顔を浮かべ、黎明は俺の隣まで登ってきた。
 よいしょと枝に腰を落とし、黎明は辺りの高さに驚いていた。
「わー!凄い高いねー」
「……俺のお気に入りの場所だ」
 そう言って、俺も笑った。





 それから俺達が家に帰ったのは太陽が沈みきった後の事だった。
 勿論、俺は親父に怒られた。
 キリチョに黎明は怒られていなかったが。
 ちぇ。何で俺だけ……

 だけど、こいつを見ていると怒る気にもなれねーけどさ。

「それじゃあ、次の月の日に迎えに来ます。それまでに身支度を整えておいてください」
 そう言ってキリチョは黎明を家の外で待っている様に言った。
 普通ならば次の日までに身支度は終わるのだが……聖獣の器となる云々の身支度もあるのだ。
 身体を清めたり、聖獣の勉強やら……色々だ。(聖獣の勉強は本当に予備知識程度だが)
「はい、分かりました」
 何故か俺ではなく親父が答えた。
「良いか?ユエ。お前もあの黎明って娘みたいに良い子にするんだぞ?」
 そう言って親父は俺の髪をぼさぼさにする勢いで撫で始めた。
 そんなに長い訳でも無い俺の髪だが、乱暴に撫でると直すのが面倒なのだ。
「止めろっての!!」
「ふぉふぉふぉふぉ、修行に出たら親子の交流も少なくなる。良いでは無いか」
 暴れる俺を止める長老。
 キリチョも笑いをこらえながら「そうそう」と頷いている。


「それでは、次の月の日に……」
「はい」
 軽く頭を下げ、キリチョはドアの方へと向かった。が。
「あ、そうそう」
 向かいかけた身体を直し、キリチョはこう言った。


「訂正しておきますが、黎明は男ですよ?」





「「は?」」
「なっ」
 呆気に取られる親父と長老。
 俺は驚きの声を上げた。

 あんなに可愛い顔してるのに!?

 驚きの声を上げた俺の声を聞き、外で待っていた黎明が「どうしたの?」と言いたそうに顔を覗かせた。





 こいつが……男?



「ははははははは!!これは騙されましたなぁ!!」
「ふぉふぉふぉふぉふぉふぉ、これだけ可愛らしいとどこから見ても女の子じゃのう?」
「??」
 よく分かっていない黎明は頭を撫でられながら首を傾げていた。


 俺は色んな意味で硬直していた。





 こうして……俺の初恋は物凄い終わりを迎えた。


END


ユエくんの昔話ですねー。あえて、三人称で書いたみたいです。
ご主人様は昔っから可愛かったんですよ(笑)

あ、ご主人様の方が兄弟子なんですね。


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