★Novel >> 水/葉月 ルナ

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 ぴちょん。

 ぴちょん。

 ぴちょん。

 ぴちょん。

 ぴちょん…………





 絶え間なく聞こえて来る音。
 それは昼間ならば別に気にならない程度の音でも……夜になれば嫌でもうるさくなってしまいます。
「うるさいの〜!」
 シルヴィはご主人様が昼間洗濯してくれた枕の下に頭を入れて唸りました。
「うん……少しうるさいねぇ」
 本を読んでいたご主人様はクマタンを膝の上に乗せて呟きました。



 シルヴィ達が住む場所。
 そこは城です。
 実際には違うのですが……そこを見た人は皆口を揃えて『城だ』と言います。







 元々は一階の建物に二階、三階とドンドンと付け加えていきました。
 地下には敢えて作らず……空へ、空へ……と。
 上にだけ作る技術は無かったので、最初は右に、次に左に……と住宅地を作っていきました。
 気がついた時には辺りは建物に囲まれた無法地帯になっていました。
 そこに住む者達が建てた城。
 コンクリートが剥き出しでお世辞にも綺麗とはいえませんが……



 シルヴィ達は……そこの上層に住んでいました。(隣にはキリチョ)




 そんな場所に住んでいるシルヴィ達を本日悩ませているのは……何処からか聞こえて来る水音。
「もー!!」
 ジタジタするシルヴィに笑みを向けるご主人様。
 苛立っていても行動が可愛らしいシルヴィなのです。
「こうなったら!!何処から水の音がするのかを調べちゃう!!」
「あ!僕も行く!!」
 楽しそうに手を繋いで気合を入れる二匹ですが……
「けど、もう遅いよ?今出ると怖い人達が居るかもしれないし」
 ご主人様の言葉に二匹は足を止めました。
 シルヴィ達はご主人様といつも一緒なのでウッカリしていました。
 この城は一種の『無法地帯』なのです。
 一度素人が入り込んだら数日、数ヶ月は出れない場所……


 今玄関を開けたらそこには……怖いお兄さんが居るかもしれません。



「う〜……」
 長い耳を垂らし、シルヴィが唸ります。
 クマタンも尻尾を震わせつつ怯えています。
「だから、調べるのはまた今度……ね?」
「……は〜い」
 ご主人様の言葉に返事をし、二匹は「怖いねぇ〜」と相談を始めました。
 けれどこの場所を引っ越そうと思った事はまだ一度もありません。
 怖い場所ですが……それでも二匹もこの場所が気に入ってるのです。




「くー」
「ん〜……ご主人様〜vv」
 二匹はご主人様の作ってくれた美味しいケーキを食べ、すぐに眠りにつきました。
 初めは水音をうるさがっていましたが……睡魔には勝てません。
「くす」
 仲良く枕を一緒にしている二匹を見つめ、ご主人様はニッコリ微笑みました。
 可愛らしい二匹の身体に布団をかけてやり。
「さて……」
 ゆっくりと腰を上げました。




 ドアを開けると……そこにはご主人様の師匠のお兄さんが立っていました。
「あっ……」
「二匹は寝たか?」
 くすっと笑みを浮かべ、ご主人様に問い掛けます。
 けれど答えは既に分かっているのです。
 あの二匹がこんな時間まで起きていられる筈が無いのですから。
「全く……主の手伝いもせずに寝るとは……やはり使い魔として……」
 お兄さんの隣にはぐちぐちと呟くユエ君の姿。
 その肩にはいつも乗っているちぃーちゃんの姿がありません。
 ご主人様はただ笑うだけ。
「……そう言って……自分の使い魔は?」



「……家で留守番と言う重要任務中だ」







 三人は耳をすまし、ある場所に向かっていました。
 それは……現在シルヴィ達を悩ませている水音の発生地でした。
「ここか……」
 ユエ君の呟き通り、一同のやってきた場所から水音は響いていました。
 そこは今居る住宅地域よりも上の場所が原因でした。
「この上は……老人街?」
 上を見上げ、呟くご主人様にお兄さんは「だな」と頷きます。
「少し前に酒の匂いがしてた……また宴会でもして零したんだろうな……」 
 お兄さんは青い光を握り締め、溜息をつきました。
 とてもお疲れの様です。
 老人街というのは上層の一郭の名でした。
 そこに老人ばかり住んでいるのでそう呼ばれているのですが……
 宴会好きでこの『城』では有名な場所です。
「つまりは……上から落ちてきてるのは……お酒?」
「げっ」
 顔をしかめるユエ君。ご主人様は「しょうがないなぁ」という顔。
 実はユエ君、数ヶ月程前にご主人様達の家に行く途中で上層から落ちてきたお酒でずぶ濡れになってしまった事があるのです。
 ユエ君は特に問題は無かったのですが……
 ちぃーちゃんがそれで目を回してしまったのです。
 それから老人街と聞くとあまり良い顔はしません。
 仕方ありませんが。
「まっ……これならどうにかなるな」
 にやりとお兄さんは笑いました。
 そして握り締めていた光を勢い良く水音の聞こえる場所へ投げつけました。


 とん。
 てん。
 かん。
 てん。
 こん。




 光は数回コンクリートにぶつかり、跳ね……辺りを青い光で包み込みました。
「何をしたんだ?」
 ユエ君の言葉にお兄さんは少し考え。
「上層から流れる水を遮断したんだ。まぁ……酒は遮断し、雨は遮断しない様にコントロールしてみよう」
「シルヴィやクマタン……ちぃーちゃんがちゃんと寝れる様にね」
 ご主人様はお兄さんの顔を見つめ、ニッコリ微笑みました。
「……まぁな」









 次の日。

「水の音、聞こえなくなったね〜」
 目の前のちぃーちゃんにチーズを渡しつつシルヴィが嬉しそうに笑います。
「これで夜もぐっすり出来るね〜v」
 「そうでなくてもぐっすりだっただろう?」と少し遠くからユエ君の呟きが聞こえます。
 けれど三匹には聞こえません。
「ん〜……けど、何の音だったのかな?」
「雨が溜まってたのかな??」
「ちゅ〜」







 今日も『城』の中で可愛らしい子供達の笑い声が響く……


END


ルナちゃんは九龍城が好きです。そんな城に住んでるしるくまたち。中国(というかカオス)好きだよねぇ、本当に。
睡魔に勝てないこの子たちが愛しくてたまりません(^O^)


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